THE TEN COMMANDMENTS 評価 9
映画『十戒』(1956)鑑賞。232分の巨作。こんな沢山の衣装着けたエキストラ観たことない、セットも豪奢。舞台的な派手でチープな装飾が目に楽しい。金掛けまくってるけど物語も壮大で音楽が雄大、記紀に忠実と言えどやっぱり映画的、ブルンナーのラムセス、バクスターのネフェルタリも良し。
@otomura2 ヘブライ人(ユダヤ人)がエジプトの奴隷だった時代。時のファラオ、セティ一世はヘブライ人のあいだで囁かれている救世主誕生の噂を危惧し、ヘブライの新生児の抹殺を命ずる。とある一人の赤子の母はやむを得ず生まれた子を籠に入れナイル川に流す。流れ着いた赤子を拾ったのは王女(ファラオの妹君)子をモーゼと名付けヘブライの子という事実を隠し我が子として育てた。
モーゼは武勇と知恵に長けた立派な青年へと成長した。ファラオ、セティ一世もモーゼをいたく気に入り実子ラムセス以上に彼を寵愛した。セティ一世の美しき娘?ネフェルタリも彼の虜だった。しかしモーゼはあることで自らの出生の秘密を知ってしまう…。
という始まり。始まりというか、ネタバレではないと思いますが、モーゼがいかにモーゼとなったかを描くドラマでもあるので、無論、王家のモーゼは預言者モーゼになるのですが、上記のあらすじでざっと映画の半分くらいは進んでますね。長い長いB級ホラー映画が三本観れるくらいの尺ですが、全然長く感じなかった。いや長く感じないのとは少し違うかも知れない、長いことは長いが全く退屈ではなかった。これだ。
モーゼが神の声を聞き、そして海を縦に割ったか、という事実の真偽はさておき、いや以前にモーゼという男は実在したのか、という真偽もさておき、しかしモーゼがナイルに流され、王族に拾われ、罪を犯し、砂漠に投げ出されシナイ山で神の声を聞き、ヘブライの民を解放へ導く、という聖書にあるというエピソード、それはこの映画で再現されています。時のファラオ、セティ一世やラムセス二世、ネフェルタリなどは当時の王家の人々、事実、モーゼとラムセスやネフェルタリなどが兄弟や恋人のように関わっていたかどうかは、この映画の創作の部分かも知れませんが、そこが映画の面白いところ。
ヘブライ人の子とは誰も知らず、時のファラオの子として成長し、ラムセスと兄弟としてしのぎを削り、美女ネフェルタリと甘いラブロマンス。モーゼを演じているチャールトン・ヘンストンも最初は王家の子として美しい装飾をまとい小奇麗な戦士として登場しています。これまでが前半。
最近観た名作映画「イヴの総て」で主人公イヴ・ハリントンを演じたアン・バクスターのネフェルタリ、この映画を観る上で期待していた一部ですが、期待通り、美しいけど、少し危険な香りがする美女感が良かった。それとキャストで良かったのはこの映画でちょっと邪推な心を持っているファラオの子ラムセスを演じたユル・ブルンナー、王族の証し弁髪姿で、美しい顔、美しい肉体、王族らしさが漲ってました。そして登場人物が多いこの作品。見逃しませんでした、これまた最近観たヒッチコック監督の名作「レベッカ」で要注意人物メイドのダンヴァース夫人を演じていた女優(ジュディス・アンダーソン)彼女も召使いの役で登場してましたね、重要な役だけど前半でフェードアウトしますが。
この前半。王室、王宮内や、野外では新たな神殿の建造シーンなどで埋め尽くされてますが、どのシーンもセットが大きくて圧巻。室内シーンでは、ちょっと舞台的で安っぽいというか派手だけど、それぞれエジプト的な装飾で着飾った役者の衣装、それだけじゃなく、武器や鎧、調度品、家具、卓上の小物などありとあらゆる無数の小道具、などとにかくお金が掛かっていて、目に楽しい。
建築シーンも一部は特撮で規模が大きく見えるように細工しているけど、実際にセットとして作られている部分もでかい。なによりエキストラの数がハンパじゃない。後半部はモーゼによるイスラエルの民の救出シーンが続くが、これもエキストラの数がハンパない、現代映画のスタジアムのシーンの数万人とか、これも一応エキストラと呼ぶかもしれないが、それとは次元が違う。すべてのエキストラが衣装を着ていてそれぞれ貧しい民なりの演技をしつつ、画面内を夥しく動いている。こんな圧巻なエキストラの仕事は観たことなかったですね。
そして後半は特撮を多用した、モーゼの見せ場のシーンへなるのですが、現代の映画なら、映像を観ててもCGやら、ワイヤーやら、セットやら、だいたい観ててどうやってシーンを作っているのか想像できそうなものですが、少し古い映画の特撮映像は意外と分からないもんですね。十の災いやモーゼの見せ場の場面などこれはどうやって撮っているだろうと思う部分も多々ありました。
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