ROPE 評価 8
1948年のアルフレッド・ヒッチコック監督の作品「ロープ」を鑑賞しました。最近はドラマ「24」でも採用されておりますが、映画内の時間進行と現実の時間進行を同時に進めるという当時としてかなり実験的な作品。今で言うリアルタイムですね。1924年にシカゴで起こったローブ&レオポルト事件という実際の事件が題材だそうです。撮影も1リール1ショットという長回しシーンの連続というのも以前から興味があり、いつか観てみようと思っていた作品です。カラー作品です。
一つ筆者は観る前に誤解しておりましたが、最初上映時間80分、ぶっつけ本番1ショットの映画なのかと思ってましたが、よくよく考えるとそれは物理的に不可能で、フィルム撮影の当時1リールはだいたい10分ちょっとということなので、それ以上長いシーンを1回で撮影するのは不可能だったということで、実際には全部で1ショットではなく、1リール1ショットの作品です。なので長回しシーンは上映時間80分なのでだいたい8回くらい、をつなぎ合わせ自然な進行を作っていました。フィルムとフィルムのつなぎの部分は役者の背中をアップにして画面を闇の状態にして、誤魔化すという感じです。
マンハッタンの摩天楼が一望できるとあるアパートで青年ブランドとフィリップは自分たちが優れた人間であることを証明するため知人を呼び出しロープで殺害しその部屋に遺体を隠し、そこで人を呼びパーティーを開く計画を立てる。パーティーにやってきたのは殺された青年の父親、恋人、友人、メイド、恩師など。自信家のブランドンはスリルを味わうため大胆な行動を連発し、かたやフィリップは罪の意識に耐えられず動揺の連発…。
という物語。ポスターにデカデカと載っている他のヒッチコック作品にメインとして多数出演している当時の大スター、ジェームズ・スチュワートは今作ではメインではないがキーパーソン。それとこの映画はアパートのみの1シチュエーション映画でもありますが、背景もセット、時間が進むにつれ空が暗くなったり、それを表現するために大きな窓の部屋だったりセットも素晴らしい。
ぶっつけ本番1ショットではなく1リール1ショット、約10分の長回しシーンの連続ということで、筆者が観た感じメインの二人の青年を演じている二人はなんとなく失敗できないという演技の緊張が伝わってきます。設定上遺体が見つかるかも知れないという心境の二人なのでオドオドするのは役柄上当然なのだが、これは撮影のプレッシャーの緊張なのか、演技上での緊張なのか、見極めが難しいですね。なにしろ、長回しのあいだはずっと登場人物の誰かが長セリフを話しており、且つ食器を並べたり、ピアノを弾くそぶりをしたり、燭台の蝋燭に火を点けたり、と大変ですから、いつ遺体が発見されるかというスリルと並行して、演技に失敗できないというスリルも観ていて感じます。
内容はとてもシンプル、遺体が見つかってしまうのか、というスリルを楽しむ映画ですが、なぜ裕福な青年二人が、自分の優位性を示すためにこんなことをしているのかというバックボーンも犯罪者の思考は理解はできないけどこの映画の語り口。それとこの映画は実は同性愛も描いています。当時は検閲が厳しかったということで、あからさまな表現は一切ないので、同性愛は関係ない、という風にもとれる感じになっておりまうが、これは同性愛も描いた作品です。
この作品の他、1959年の「脅迫/ロープ殺人事件」2002年のサンドラ・ブロック出演「完全犯罪クラブ」も同じローブ&レオポルト事件を題材にした映画だそうです。
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